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第3回:データ計測環境の整備

  • 執筆者の写真: マーケティング事業 統括 I
    マーケティング事業 統括 I
  • 3月24日
  • 読了時間: 13分

~GAを中心に最適な計測基盤を構築する~

はじめに

前回(第2回)の記事では、ビジネス目標から逆算してKPIを設定することの重要性について解説しました。デジタルマーケティングを成功に導くためには、まず「何をいつまでに達成したいのか」を明確化し、それに紐づくKPIを策定することが肝要です。しかし、KPIを決めただけでは十分ではありません。実際の施策で得られるデータを的確に計測し、継続的に改善につなげる仕組みを整える必要があります。

そこで本記事では、データ計測環境の整備というテーマを掘り下げます。中でも中心的存在となるのが、Googleアナリティクス(GA)です。さらに、Google Tag Manager(GTM)やその他の連携ツールをどう使うか、コンバージョン計測をどう設計すればいいか――といった実務的な視点を踏まえながら、「最適な計測基盤」を構築するための要点を解説します。

  • なぜGAが重要なのか?

  • GTMとの連携やイベント計測の仕組みはどう作ればいいのか?

  • コンバージョン計測を設計する際の注意点は?

  • よくある失敗やエラーをどう防ぐか?

これらの疑問に答えつつ、実際に運用で活かせるトピックを網羅していきます。デジタルマーケティングで成果を上げるには、正確なデータとスピーディーな分析サイクルが欠かせません。本稿が、そのための第一歩を踏み出す助けとなれば幸いです。


第1章:なぜ計測環境の整備が不可欠なのか

1-1. デジタルマーケティングの強みを活かすには

デジタルマーケティングの最大の強みは、「効果測定を細部まで追える」点にあります。具体的には、以下のようなデータを捕捉できるのが特徴です。

  • 広告のインプレッション数、クリック数

  • Webサイトへの訪問者数、ページ遷移、滞在時間

  • コンバージョン(問い合わせ、購入、資料ダウンロードなど)の数や率

  • どのチャネル(検索、SNS、広告など)から来訪したのか

  • ユーザーの地域、デバイス、ブラウザなどの属性

これらを正しく集計して分析できれば、“どの施策がビジネス目標に対してどれだけ貢献したか”が明確になり、施策の取捨選択や予算配分に大きく役立ちます。

1-2. 計測環境が整っていないと起こる問題

一方で、計測が不十分な状態で広告を運用したりSNSを使ったりしても、次のような問題が発生します。

  1. 広告予算の無駄


    どのチャネルが成果に貢献しているのか分からず、闇雲に費用をかけることになる。

  2. KPIモニタリングの不備


    KPIを設定しても計測ができないため、改善すべきポイントが分からない。

  3. 組織内の意思決定が感覚的になる


    データがないため、「なんとなく検索広告を増やしてみる」「SNSにも出稿してみる」といった曖昧な運用に陥る。

  4. レポートが信頼できない


    数字の整合性がとれず、経営層に報告しても説得力に欠ける。

結局、「デジタルマーケティングはよく分からない」「代理店任せでコストだけが増える」という悪循環に陥りがちです。したがって、最初に取り組むべきは確実な計測基盤の構築といっても過言ではありません。


第2章:Googleアナリティクス(GA)の導入意義と基本設定

データ計測環境を語るうえで、まず真っ先に登場するのがGoogleアナリティクス(GA)です。GAは、Webサイトやアプリの訪問者データを集計・分析するための無料ツール(※上位プランのGA 360は有料)として、世界中で最も広く使われています。

2-1. GA導入のメリット

  1. 無料で利用できる(基本版)

    小規模事業から大企業まで幅広く対応。

  2. 豊富な分析機能

    セッション数、ページビュー数、直帰率、コンバージョンなど多面的にデータを取得可能。

  3. Google広告との連携

    リスティング広告のデータと統合し、広告経由のコンバージョンや収益を可視化できる。

  4. カスタムレポートやカスタムディメンション

    自社サイトの特性に合わせて柔軟にレポートを作成可能。

  5. Googleデータポータル(旧Data Studio)との連携

    ダッシュボード化が容易で、経営層やチームメンバーと視点を共有しやすい。

2-2. GAの基本設定ステップ

GAを有効活用するためには、最初の設定が非常に大切です。

  1. アカウント・プロパティ・ビューの作成

    • GAではアカウント(企業単位)、プロパティ(Webサイトやアプリ単位)、ビュー(分析用単位)の3階層を概念として持つ。

    • まずは自社用のアカウントと、サイトごとのプロパティ、そしてメインビューを作成。

  2. トラッキングコードの設置

    • GAから発行されたトラッキングIDを、対象サイトの全ページに埋め込む必要がある。

    • HTMLの</head>要素内に設置するのが一般的だが、後述するGTMを使う場合は簡略化できる。

  3. 目標設定(コンバージョン設定)

    • 問い合わせフォームの完了ページや、ECサイトの購入完了ページなどを「目標URL」として登録する。

    • イベントを使って「ボタンクリック」や「PDFダウンロード」などをコンバージョンと定義することも可能。

  4. フィルタ設定

    • 社内IPアドレスを除外したり、スパムトラフィックを除外するためのフィルタを設定し、データの純度を保つ。

  5. 自動連携の設定

    • Google広告などの連携を有効化し、広告キャンペーンのパフォーマンスをGA上で追えるようにする。

2-3. GA4(Google Analytics 4)の登場とポイント

従来のユニバーサルアナリティクス(UA)から、GA4という新バージョンへの移行が進められています(UAは2023年7月以降、一部機能が停止)。GA4の最大の特徴は、イベントベースの計測に切り替わったことです。以下のようなメリットがあります。

  • ユーザ中心のデータモデル

    デバイスやプラットフォームをまたいでもユーザをトラッキングしやすい。

  • 自動で収集されるイベント

    スクロールやサイト検索、動画エンゲージメントなど、標準で多くのイベントを取得。

  • 探索レポート機能

    ユーザ経路分析やファネル分析が直感的に行える。

ただし、GA4はまだ開発途上の面もあり、カスタムレポートやユースケースによっては少し扱いづらい部分もあるため、移行時に設定漏れやイベント設計の最適化が必要となります。


第3章:Google Tag Manager(GTM)やその他ツールとの連携

GAを導入しただけでは、特定のボタンクリックや動画視聴など細かいユーザー行動をトラッキングするには不便です。そこで活用したいのがGoogle Tag Manager(GTM)です。

3-1. Google Tag Manager(GTM)の基本

GTMは、サイトのソースコードに直接スクリプトを埋め込まなくても、タグ(トラッキングコード)を一元管理できるツールです。

  • メリット

    • コード変更を開発者に依頼する必要が大幅に削減

    • マーケ担当者がタグやイベントをGUIベースで設定

    • バージョン管理やプレビューモードがあるため、不具合が起きてもロールバックが容易

  • できること

    • クリックイベント(ボタンクリック、PDFダウンロードなど)の計測

    • スクロール率や動画再生状況をイベントとしてGAに送信

    • Google広告のコンバージョンタグやリターゲティングタグ、Facebookピクセルなどを一括管理

3-2. 基本的な設定ステップ

  1. GTMアカウントとコンテナ作成

    • GA同様、GTM専用のアカウントを作り、サイトに紐づくコンテナを生成。

  2. GTMコンテナコードの設置

    • サイト全ページの</head>や</body>にGTMのコードを挿入(推奨の位置は公式ドキュメント参照)。

  3. GAタグの作成・トリガー設定

    • GAのトラッキングIDをGTM内で設定し、「全ページに発火」のトリガーを紐づける。

  4. イベント(クリック、フォーム送信など)の設定

    • どの要素をクリックしたらどのタグを発火させるかを指定。

    • 例:特定のクラス名やIDを持つボタンが押されたら「コンバージョンイベント」としてGAに送信。

  5. プレビューモード&公開

    • GTMのプレビューモードで正しくタグが動作するか確認し、問題なければコンテナを公開(Publish)。

3-3. その他の便利ツールや連携例

  • Google Data Studio(旧名:Looker Studio)

    GAやGTM、Google広告などのデータをビジュアル化し、ダッシュボードを作成するツール。経営層向けレポートにも最適。

  • ヒートマップツール(Clarityなど)

    ページ内のユーザー行動(スクロールやクリックの集中度)を可視化し、LP改善に活用。

  • MAツール(Marketo、HubSpot、Pardotなど)

    広告やWebサイトで取得したリード情報と連携し、自動メール配信やスコアリングで営業効率を上げる。

第4章:コンバージョン計測の仕組みと注意点

KPIやKGIを達成するうえで最も重要なのが、コンバージョン(CV)を正しく計測することです。コンバージョンとは、Webサイトなどでの「成果」にあたるアクション(購入、問い合わせ、会員登録など)を指します。

4-1. コンバージョン計測の主な方法

  1. サンクスページ(完了ページ)方式

    • フォーム送信後や購入完了後に遷移するページをCVページとして設定。

    • GAやGTMで「URLに/thank-you/が含まれたらCV」と定義する。

  2. イベント方式

    • サンクスページが存在しない場合(モーダルウィンドウで完結など)、ボタンやリンククリックをイベントとしてCVカウントする。

    • GTMでクリックや動画再生などをトリガーにイベントを発火し、GAで「イベント=CV」として設定。

  3. GA4でのイベント指標

    • GA4ではイベントベースが基本となり、コンバージョンとして指定したイベントをCVとみなす仕組み。

4-2. よくあるミスと対策

  • サンクスページがリロードで重複カウント

    • リロードやブックマークで何度も読み込むとCVが二重三重に計測されるケース。

    • 対策:リロード不可のワンタイムURLにするか、イベント方式で重複をチェック。

  • サブドメインや外部サービスに遷移して計測が切れる

    • 外部決済やサブドメインで完結し、セッションが途切れてしまうケース。

    • 対策:クロスドメイントラッキングの設定、あるいは決済サービスが提供するリダイレクトURLを経由してGAに連携。

  • フォーム送信時のJavaScriptエラー

    • イベントが発火しないままページが遷移してしまう。

    • 対策:フォーム送信ボタンに遅延設定(数秒後にリダイレクト)か、イベント発火を同期的に実行するスクリプトを導入。

4-3. オフラインCVの扱い

BtoB商談や電話問い合わせ、店舗来店などオンライン以外の経路で最終的な成果が生まれる場合、オフラインCVとして連携を考えなければなりません。

  • CRM連携:営業チームが商談ステータスを更新すると、Google広告やMAツールへ商談結果をアップロードし、どの広告が成約に繋がったか把握できる。

  • 電話CVトラッキング:独自の電話番号を発行し、電話があった時点で広告・キャンペーンを特定。

  • 店舗来店計測:クーポンやQRコードを使った来店時の取得などで、オンライン広告からの来店を追跡。


第5章:エラーやトラブルを防ぐためのチェックリスト

計測環境の整備では、細かい設定ミスや想定外のシナリオでトラブルが起きやすいです。以下の項目を定期的にチェックしましょう。

  1. タグの発火テスト

    • GTMプレビューモードで、各イベントやコンバージョンタグが実際に発火しているか確認。

  2. データの反映タイムラグ

    • GA4や一部ツールではリアルタイム性が限定的。数時間~数日遅れて計測結果が表示されることもある。

  3. フィルタ・除外設定

    • 社内IPや開発環境を除外しているか? スパムリファラをブロックしているか?

  4. マルチドメイン・クロスドメイントラッキング

    • サブドメインや別ドメインへ移動したときにセッションが途切れないか?

  5. Utmパラメータの統一

    • キャンペーン名やメディア名(utm_medium、utm_sourceなど)をチーム内で統一しないと分析しづらくなる。

  6. バージョン管理と権限設定

    • GTMやGAの管理者権限を複数人が持つ場合、誰がどんな変更をしたかログを確認できる体制を作る。


第6章:計測環境整備後の次のステップ

計測環境を整えただけでは、デジタルマーケティングの成果は上がりません。重要なのは、そのデータをどう活かすかという点です。

  1. KPIモニタリングとダッシュボード構築

    • 第4回の記事で詳しく取り上げる予定ですが、日次/週次で確認すべき指標をダッシュボード化する。

    • 経営層や実務担当者で必要な指標が違うため、権限やカスタムビューを使い分ける。

  2. 広告運用やサイト改善への反映

    • GAデータを元に、CVRの高いページやデバイスを特定し、予算配分を最適化。

    • 離脱率の高いページをランディングページとして広告出稿しない、など戦略を見直す。

  3. BIツールやMAツールとの連携

    • GAデータだけでなく、CRMやERPの売上情報などと組み合わせて多角的な分析を行う。

    • MAツールでリードスコアを管理し、サイト滞在履歴などのトリガーでメール施策を実施。

GAとGTMを軸に、他のシステムやツールを組み合わせることで、デジタルマーケティングがビジネス目標にどれだけ貢献しているかを全社的に可視化できるようになります。


第7章:よくある質問(Q&A)

Q1. GAやGTMは導入済みだが、全然データが活用されていない。どうすれば?A. まずは、社内で「どの指標を見て何を判断したいのか」を再定義しましょう。例えば週次の広告担当会議でCTRやCPAを確認し、改善策を決める――といった運用フローを作ることが大事です。ツールは入れただけでは意味がなく、“どういう議論をしたいか”を先に決めてからレポートを整備するとスムーズです。


Q2. GA4に移行したら、従来のUAと数値が違いすぎるのはなぜ?A. GA4のデータモデル(イベントベース)やセッション定義がUAと異なります。計測方法が変わったため、同じ条件でも数値差が出る場合があるので、UA時代のデータとGA4を直接比較するのは注意が必要です。必要なら双方の指標を並行運用し、移行期間を設定してスムーズに切り替えましょう。


Q3. GTMを使いこなすにはコーディング知識がいる?A. 基本的にはGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)で操作可能ですが、複雑なカスタムトリガーや変数設定をする場合、JavaScriptや正規表現の基礎は理解したほうがスムーズです。ただし、小規模のサイトや一般的なイベント設定なら、非エンジニアでも十分扱えます。


第8章:まとめと次回予告

本記事では、デジタルマーケティングにおけるデータ計測環境の整備について、Googleアナリティクス(GA)とGoogle Tag Manager(GTM)を中心に解説しました。KPIを正しく設定しても、計測基盤が整っていなければ成果を測ることはできませんし、改善の方向性も見えないのが実情です。

  • GAがデータ集約の基盤となり、広告・SNSなど複数チャネルのパフォーマンスを一元把握

  • GTMを活用することで、サイト更新に伴うトラッキングコードの追加・変更を柔軟に管理

  • コンバージョン計測設計を入念に行い、重複や漏れ、オフラインCVの取り扱いなどに注意

  • 定期的なレビューやアラート設定により、データを生きた情報として活用

次回(第4回)では、KPIモニタリングとダッシュボード構築について詳しく取り上げます。せっかく収集したデータを“経営視点”でどう可視化し、担当者・経営層それぞれが成果を見やすくするのか――具体的なレポート事例や自動化の仕組み、ポイントとなるツールを交えながら解説します。データドリブンなマーケティング体制を実現するためにも、ぜひ次回もご期待ください。


おわりに

計測環境の整備は、デジタルマーケティング成功への重要なステップです。GAでサイトの訪問状況を把握し、GTMで各種イベントを簡単に管理できれば、日々の運用が格段に効率化するだけでなく、施策改善のスピードも上がります。逆に言えば、計測基盤が不十分な状態で広告やSEOなどに投資しても、成果が見えずに予算を浪費するリスクが高いでしょう。

本記事で紹介した設定やツールの活用方法はあくまで基本です。実際の現場では、サイトの構成やサービス内容、既存システムとの連携などによってカスタマイズが必要になります。大切なのは、「どのように設計すれば現場の運用効率を上げられるか」「どうすれば経営層からの要望や視点を取りこぼさないか」を考え抜くことです。

次回「KPIモニタリングとダッシュボード構築:経営視点を反映した可視化とは」では、より実践的な視点で“集めたデータをどう見せ、どう意思決定に活かすか”を探っていきます。継続的にPDCAを回すためのベストプラクティスを紹介しますので、どうぞお楽しみに。


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