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第9回:代理店の選び方

  • 執筆者の写真: マーケティング事業 統括 I
    マーケティング事業 統括 I
  • 2025年5月5日
  • 読了時間: 12分

~大手・中堅・専門性の高い代理店のメリットとデメリット~

はじめに

これまでの連載では、デジタルマーケティングの全体像から始まり、ビジネス目標のKPI設定やデータ計測基盤の整備、メディアアロケーションなど、内製で取り組む際のポイントを中心に解説してきました。しかし、実際の運用現場では、広告代理店やコンサルファームなどの外部パートナーに支援を依頼するケースが少なくありません。

デジタル広告が複雑化し、検索広告・SNS広告・ディスプレイ広告・ネイティブ広告・動画広告など多岐にわたるなかで、全てを自社(インハウス)で賄うのはハードルが高いというのが実情です。そこで選択肢となるのが、大手代理店から中堅・専門特化型の代理店、あるいは個人コンサルなどを活用するという方法。しかし、代理店といってもサービス内容や強み・弱みが異なるため、どこを選ぶのが正解なのかは企業によって大きく変わります。


本稿では、広告代理店を大別して「大手」「中堅」「専門性の高い代理店(特化型)」という視点でメリット・デメリットを整理し、コスト感や得意分野、自社に合った選び方について掘り下げます。さらに、代理店活用でよくある課題や失敗事例を踏まえ、自社に最適なパートナーを見極める基準を考えましょう。次回(第10回)で取り上げる「マーケティング組織のインハウス化」との関係性も含め、外部リソースと自社内製のバランスをどう取るか、ぜひ参考にしていただければ幸いです。


第1章:広告代理店の役割と業務範囲

1-1. デジタル広告代理店に依頼する理由

代理店とは、本来「広告枠を仕入れて販売する」という機能を持っていますが、今日のデジタル時代では単なる広告枠の仲介に留まらず、運用・クリエイティブ制作・効果測定・レポート作成など広範囲のサービスを提供するケースが増えています。企業が代理店に依頼する主な理由は以下のとおりです。

  1. 専門知識・運用ノウハウを得られる

    • Google AdsやFacebook広告など、多彩なプラットフォームを熟知するスタッフが多数在籍

    • 最新のアルゴリズム変更やトレンドに追随しやすい

  2. リソース不足の補完

    • 社内に広告運用専門の人材を置けない、あるいは人手が足りない場合

    • 運用担当者を一から採用・育成するコストや時間を削減

  3. クリエイティブや戦略立案の支援

    • 広告コピーやバナー制作、LP改善などを一括で依頼可能

    • 広告戦略・メディアプランニングにおいて豊富な事例を活かせる

  4. メディアレップやツールベンダーとのパイプ

    • 大手代理店であればGoogleやMetaなど主要プラットフォーマーと直接連携し、最新ベータ機能の早期導入などメリットを享受可能


1-2. 代理店に任せすぎるリスクもある

一方、全てを丸投げしてしまうと、運用方針やクリエイティブがブラックボックス化しやすいのも事実です。企業が代理店をどうマネジメントするかが成果に直結します。ここでは、広告代理店を大きく「大手」「中堅」「専門性の高い(特化型)」に分け、それぞれの特徴と選び方を深堀りします。


第2章:大手代理店のメリット・デメリット

2-1. 大手代理店とは

電通、博報堂、ADKなどの総合広告会社が代表的存在です。最近ではデジタル特化型の大手、例えばサイバーエージェント、セプテーニ、オプトなども「準大手~大手」のポジションに位置付けられます。いずれにせよ社員数が多く、多種多様なメディア・サービスを扱っているのが特徴です。


2-2. 大手代理店のメリット

  1. 豊富な人員と総合的なサービス

    • 広告以外にもPR、イベント、クリエイティブ制作、マスメディア等を含む包括的提案が可能。

    • 大規模キャンペーンやテレビCMとの連動企画もワンストップで行える。

  2. メディアレップやプラットフォームとの強いパイプ

    • GoogleやFacebook/Metaなど主要プラットフォーマーと強いパートナー関係を持ち、最新情報や優先サポートを受けやすい。

  3. 大規模案件の運用実績

    • 大手企業向けのノウハウを豊富に蓄積。大きな広告予算を扱う場合に安定感がある。

  4. 多拠点展開と大規模チーム体制

    • 地方拠点や海外展開、マルチチャネルを一括管理できるなど、対応範囲が広い。


2-3. 大手代理店のデメリット

  1. 費用が高額になりやすい

    • 組織規模が大きく、営業・ディレクター・運用担当など人件費が上乗せされることが多い。

    • レベニューシェア型の手数料が高く設定されるケースもある。

  2. 優先度が下がる可能性

    • 大手クライアントが多数あるため、自社が小規模案件だとチームの優先度が下がり、対応のスピードや質に不満が出る場合。

  3. 担当者の入れ替わりやブラックボックス化

    • プロジェクトごとに担当者がコロコロ変わり、ノウハウが引き継がれにくい

    • 内部のヒエラルキーで上席のOKが必要で決定まで時間がかかることも


第3章:中堅代理店・デジタル専門代理店のメリット・デメリット

3-1. 中堅代理店・デジタル専業の特徴

サイバーエージェントやセプテーニなど、デジタル広告の専門家を多数抱える企業もあれば、社員数数十~数百名程度で特定の得意分野に強い中堅代理店も存在します。

  • サイバーエージェント:インターネット広告からゲーム事業、AbemaTVなど多角展開しているが、デジタル広告領域は国内トップクラス

  • セプテーニ/オプト:デジタルマーケ領域で長い歴史を持ち、多くの実績がある

3-2. 中堅・デジタル専業代理店のメリット

  1. デジタル領域の専門知識が深い

    • リスティング、SNS広告、ディスプレイ、アフィリエイトなど、最新のプラットフォーム・アルゴリズムをキャッチアップ。

    • 自社でクリエイティブ制作や分析ツールを持っている場合も。

  2. 費用が大手より抑えられる可能性

    • 大手ほどの組織負担が少なく、手数料が比較的安めなケースも。

  3. 柔軟な対応

    • 大手に比べて組織階層が浅く、スピーディーに施策を提案・実行できる場合が多い

    • 担当者が比較的固定され、コミュニケーションしやすい


3-3. 中堅・デジタル専業代理店のデメリット

  1. マスメディア連動が難しい場合も

    • テレビCMや大規模イベントなど総合プロモーションを希望する場合、対応が難しいか追加コストが高くなる可能性。

  2. 大企業案件に比べて社内体制が脆弱なことも

    • 大規模プロジェクトではリソースが不足したり、組織力が大手に及ばないケースあり

  3. 得意ジャンルに偏り

    • ある領域(リスティング、SNS)に強くても、他チャネル(ネイティブ広告、動画広告など)は弱いなど偏りがある場合がある


第4章:専門性の高い(特化型)代理店のメリット・デメリット

4-1. 専門特化型代理店とは

SEO特化、SNS広告特化、あるいは業界別(アプリ広告専門、D2Cブランド専門など)に強みを持つ代理店がこれに当たります。社員数10~30名規模で「○○領域に特化してやっています」と看板を掲げるケースが多く、特定ジャンルにおける深いノウハウが大きな魅力です。

4-2. 専門特化型代理店のメリット

  1. 深い専門知識と独自ノウハウ

    • 例えば「TikTok広告専門」で膨大なクリエイティブ実績を持つ、自社の独自フレームワークやツールがあるなど

  2. 柔軟な料金体系

    • 成果報酬型、コンサル+運用型など多様。大手にはない融通が利く場合がある

  3. レスポンスが速く、密なコミュニケーション

    • 小規模組織が多く、担当者と密に連携しながら試行錯誤できる

4-3. 専門特化型代理店のデメリット

  1. 領域を超えた総合支援が難しい

    • 例えばSEO特化代理店にSNS広告は頼めない、テレビCMとは連動しづらいなど

  2. 社内人員が限られ、担当者のリソース不足が発生

    • 人気の代理店になると、新規案件を受けきれず品質が落ちるリスク

  3. 大手クライアントへの対応実績が少ない場合

    • 数千万円単位の広告予算や複雑な組織体制への対応が慣れていないかもしれない


第5章:自社に合った代理店を見極める基準

5-1. 予算規模と担当体制のマッチ

予算規模が大きければ大手代理店が向いているかというと、一概にそうとも言えません。以下の視点が重要です。

  1. 運用担当者の専門知識

    • 広告費が大きく、メディアミックスが複雑なら、チーム体制がしっかりある大手や中堅代理店が安心

  2. コミュニケーション頻度

    • 月間数百万円程度の予算でも、代理店に高い優先度で対応してほしいなら、規模感の合う中堅や特化型が向いていることも

  3. 経営陣の意図

    • TVCMや大規模プロモーションとの連動を狙うなら大手総合、デジタルのみ深くやりたいなら中堅・特化型、という選択肢も

5-2. 業界・商材への理解度

不動産、保険、教育、B2B ITなど、業界特有の規制や顧客心理がある場合、そこに強みを持つ代理店を選ぶと導入がスムーズです。

  • 過去の成功事例を確認し、同業界の実績やノウハウをどれだけ持っているかをチェックする

5-3. レポートと運用の透明性

代理店とのトラブルでよくあるのが、「どのキーワードに出しているか、どれくらい入札しているか」など運用の詳細が不透明で、成果を評価しづらいという問題。

  • 契約時に確認

    1. 運用レポートの頻度と内容

    2. アカウントの共有・閲覧権限はあるのか

    3. 広告費の手数料率、最低契約期間


5-4. フィー形態と成果報酬

代理店費用は大きく以下の形態があります。

  1. 広告費の〇%を手数料として支払う

    • 一般的には10~20%前後

    • 広告費が増えれば代理店収益も増えるため、代理店が「広告費を減らす判断」をしにくい可能性がある

  2. 固定費+成果報酬

    • 一定の運用フィーに加え、成果に応じてインセンティブが発生

    • 適正な成果指標(CV数や売上など)を設定する必要がある

  3. 月額固定費のみ

    • 広告費の多寡に関わらず同額

    • 大きな広告予算を運用しても代理店の収益が変わらないため、モチベーションが下がるリスクも

自社に合う形態を見極め、費用対効果を常に検証する姿勢が大切です。


第6章:失敗事例と対策

6-1. 「大手を選んだけど、担当が新人でスキル不足だった」

大手代理店は幅広いサービスを提供できる反面、担当者のアサインが運任せになりがちです。

  • 対策:契約前にチーム体制を明確にし、担当者の経歴や実績を確認。定期的なコミュニケーションでスキル不足を早期に察知し、交代をお願いする選択肢を用意。


6-2. 「専門特化型代理店に頼んだら他領域をカバーできず成果が頭打ち」

例えばSNS広告には強いが、リスティングやディスプレイ広告が弱い代理店に任せた結果、総合的な最適化ができずに成果が伸び悩む場合がある。

  • 対策:必要に応じて他領域は別の代理店か、インハウスで運用する。多代理店体制の場合、連携が難しくなるため、社内で統括できる人材を配置。


6-3. 「レポートがPDF一枚で、詳しい運用内容が分からない」

手厚いレポートやアカウントアクセスがないと改善指示を出しにくい。

  • 対策:契約時に、GAや広告アカウントへの閲覧権限を要求し、運用レポートのフォーマット・データ項目をすり合わせる。


第7章:代理店との関係構築・コミュニケーション術

7-1. 目標の共有と成果評価

代理店と協力して成果を出すには、「売上増を目指すのか、リード獲得数を重視するのか、認知度を上げたいのか」など最上位目標を明確に伝え、KPIを合意しておく。

  • 週次 or 月次で成果レビューし、良かった点・課題点をオープンに議論

  • 緊急時(CVR急落など)は速やかに連絡して調整するルールを定める

7-2. データ共有とノウハウ吸収

インハウス化を見据える場合、代理店とデータを共有し、運用プロセスを学んでおくと、将来的に社内チームで引き継ぐことが容易になる。

  • 会議でアカウント画面を共有し、キーワードやクリエイティブ、入札設定などを担当者が学ぶ

  • ダッシュボード連携でリアルタイムに数値を確認し、改善点を一緒に探す

7-3. トラブル時のリカバリー

  • クレームやブランドリスク発生:広告表現や運用ミスで炎上した場合、代理店と協力して迅速に修正・お詫び対応

  • 担当者交代:代理店側で担当異動がある際、引き継ぎ期間とレポート・アカウント設定の移管を明確に


第8章:自社に合った代理店選定フロー

  1. 要件整理

    • 目標(売上、認知、リード数)

    • 予算規模、希望の広告チャネル、導入スケジュール

  2. 候補代理店のリストアップ

    • 大手、中堅、専門特化型など複数社

    • Web上の実績事例や紹介、口コミを参考に

  3. 問い合わせ・プレゼンテーション

    • 課題や目標を伝え、簡易提案書を提出してもらう

    • フィー形態や運用体制、レポート例などを確認

  4. 比較検討

    • コスト、担当者スキル、レポート精度、実績、コミュニケーションの相性

    • 大手と特化型の間でどちらが自社ニーズに合うかを冷静に見極める

  5. 契約・キックオフ

    • 目標KPIのすり合わせ

    • コミュニケーションルール、アカウント共有範囲の設定

    • 運用レポートのフォーマット・頻度の決定


第9章:まとめと次回予告

9-1. まとめ

代理店の選び方は、デジタルマーケティングの成果を左右する非常に重要な意思決定です。以下のポイントを意識しましょう。

  1. 大手代理店:広範なサービス、大規模案件の実績、メディアパイプを活かせるが費用が高く対応速度も遅くなる可能性

  2. 中堅・デジタル専業代理店:デジタル特化のノウハウ、費用やコミュニケーション面で柔軟性があるが、総合プロモーションは苦手な場合も

  3. 専門特化型代理店:特定プラットフォームや業界に深い知見がある一方、総合的な支援には限界がある

  4. 費用・契約形態:広告費の一定%か、固定+成果報酬か、透明性あるか

  5. コミュニケーションとレポート:アカウント閲覧権限や週次報告、ダッシュボード連携を事前に確認

  6. スケール&インハウス戦略:広告予算が増えたり、内製化を進める際に対応できるか

企業の成長フェーズや目標に合った代理店を選ぶことが、効率的な広告運用と費用対効果の向上に繋がります。とはいえ、一度契約すれば終わりではなく、代理店との連携とマネジメントが成果を左右する点も押さえておきたいところです。

9-2. 次回(第10回)の予告

連載の最終回となる第10回は「マーケティング組織のインハウス化:内製化を進めるメリットと進め方」をテーマに取り上げます。

  • なぜ今、企業がインハウス化に注目するのか?

  • 組織構築や人材確保、ツール導入のステップは?

  • インハウスと代理店活用を両立する“ハイブリッド戦略”とは?

代理店とどう共存しながら、自社内にノウハウを蓄積するか――本連載の総括として、デジタルマーケティングの組織論を深掘りしていきますので、ぜひご期待ください。


おわりに

本記事では、「代理店の選び方」を大手・中堅・専門特化型という切り口で解説しました。どの代理店がベストかは、自社のビジネスモデルや予算規模、内製化の方向性、必要なスピード感などによって異なります。大事なのは、 “何を外部に任せて、何を自社で担うか” という戦略眼を持つことです。

代理店に依頼するメリットは多々ありますが、丸投げではノウハウが社内に蓄積されず、戦略的な意思決定を自ら行いにくくなるリスクもあります。インハウスを検討する際に、代理店のサポートを受けつつ自社担当者が運用に入り込み、ノウハウ移転を促進するという方法も有効です。

次回(第10回)は、まさにマーケティング組織のインハウス化をテーマとして、内製化のメリット・デメリットや導入ステップ、ハイブリッド戦略などを掘り下げます。代理店の活用とインハウス化をどうバランス取りながら企業競争力を高めるか、最終回にて総括してまいります。ぜひお楽しみに。


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