第8回:【B2Cリード獲得編】ビジネスモデル別・メディア運用とターゲティングの最適化
- マーケティング事業 統括 I
- 4月28日
- 読了時間: 13分
はじめに
これまでの連載では、デジタルマーケティングの全体像やKPI設定、計測環境の整備から始まり、B2Bリード獲得やEC向けROAS最大化の手法までを深掘りしてきました。今回(第8回)は、B2Cビジネスにおけるリード獲得に焦点を当てます。B2Bほど長い商談プロセスが必要ない一方で、ECほど直接的な「購入完了」に至らない――そんなビジネスモデルの代表例が、不動産・保険・教育などのB2Cリード獲得型サービスです。
不動産:物件問い合わせや来店予約、資料請求などが“リード”となる
保険:生命保険・損害保険などで一括見積りやオンライン相談予約をCVとする
教育:塾やオンライン学習サービスへの資料請求や無料体験申込など
これらのB2Cサービスは、購買(契約)までにある程度検討時間がかかるものの、大きな契約額や長期的な継続利用を見込めるケースも多いです。そのため「1件あたりの問い合わせ獲得単価(CPL)をどう抑えるか」「リードの質をどう確保するか」という観点でデジタルマーケティングを設計する必要があります。
本記事では、B2Cリード獲得に特化した広告メディアの選定やターゲティング手法、さらにはコンバージョン単価(CPA or CPL)の管理と育成(ナーチャリング)について具体的に解説していきます。加えて、SNS(Facebook/Instagram/TikTokなど)を活用したアプローチや、リード獲得型LPの工夫、顧客育成のテクニックも紹介しますので、ぜひ最後までお読みいただき、ご自身のビジネスやクライアント案件にお役立てください。
第1章:B2Cリード獲得の特徴と前提
1-1. B2Bとの比較
B2Bと比較すると、B2Cのリード獲得には以下のような違いがあります。
検討期間が中程度
すぐには契約しないが、B2Bほど長くもない(商品によっては即決もあり)
複数の意思決定者
不動産や保険などでは家族の同意が必要な場合もある。
商談・契約時のオフライン要素
実際に店舗来店やオンライン相談を経て契約するケースが多い。
感情的な要素が強い
不安解消や安心感を与える訴求、ビジュアル要素がCVRを左右しやすい。
このように、B2Bのような複雑な稟議や長期商談ほどではないものの、オンラインでリード獲得→オフラインまたはオンライン相談→契約というフローを設計する必要があるのがB2Cリード獲得型サービスの特徴です。
1-2. リードの定義と目標指標
B2Cのリード獲得でよくあるCV(コンバージョン)例:
不動産:物件問い合わせ、内見予約、無料相談申し込み
保険:一括見積り依頼、オンライン説明会申し込み、資料請求
教育:無料体験レッスン申し込み、資料請求、個別相談予約
KPIとしてはCPL(Cost Per Lead)やCV数が中心となり、最終的に成約率や継続率を追うことでROI評価を行うケースが多いです。ただし、成約や長期継続はECほどダイレクトにオンライン上で把握しにくい場面もあるため、オフラインとの連携や電話/来店データを追跡する仕組みが必要となります。
第2章:主要広告メディアと活用ポイント
B2Cリード獲得においては、Facebook/Instagram、TikTokなどのSNS広告が大きな力を発揮することが増えています。検索エンジン広告(リスティング)も依然有力ですが、商品特性やユーザー行動に応じて最適なメディアを見極めることが重要です。
2-1. リスティング広告(Google Ads、Yahoo! Ads)
強み:
検索意図がはっきりしている(例:不動産探しや保険の見直しなど)
CVRが高まる可能性が大きい
弱み:
競合が激しいキーワードはCPCが高騰し、CPLが上がる可能性あり
イベント(例:キャンペーン期間や引っ越しシーズン)に合わせて入札戦略を柔軟に変える必要がある
2-2. Facebook/Instagram広告
強み:
細かいターゲティング(年齢、趣味、家族構成、ライフイベントなど)
クリエイティブ面での自由度が高く、ストーリーズ広告や動画広告も活用できる
リード獲得用の「リード広告フォーム」を使えば、Facebook内で個人情報を取得しやすい
弱み:
価格や具体的な詳細が伝わりにくい商材だとCVR低下
年齢層によってはFacebookよりInstagramの方が反応が良い場合も
2-3. TikTok広告
強み:
Z世代や若年層に強い訴求力。動画視聴者が多く、エンタメ性が高い
短尺動画で興味を引き、無料相談や体験レッスンへ誘導
弱み:
若年層向け商材(美容、ダイエット、学習系など)には合うが、高齢者向け商材は不向き
クリエイティブ制作が難易度高い(動画編集のスキルや企画力が必要)
2-4. ディスプレイ広告・リターゲティング
強み:
サイト訪問者の追跡で、再アプローチができる(例:資料請求を途中でやめたユーザーに再提示)
新たな潜在層にもバナーで認知拡大
弱み:
CVRがリスティングより低い傾向。CPLが高くなる可能性がある
クリエイティブの影響が大きく、ABテストで最適化が必要
2-5. 比較サイト・アフィリエイト広告
B2Cリード獲得型では、比較サイトやアフィリエイトを活用するケースも多い。
不動産:賃貸や新築分譲の比較ポータル、仲介サービスとの連携
保険:保険の一括見積りサイト、保険相談窓口との提携
教育:学習塾比較サイトや資格講座比較サイトなどに掲載
比較サイトからの流入はコンバージョン率が高い反面、手数料や掲載コストが高くなる場合もあるので、ROIを検証しながら導入を検討することが大切です。
第3章:ターゲティングの最適化とCVR向上
3-1. ユーザー属性やライフイベントを意識した訴求
B2Cリード獲得(不動産、保険、教育など)では、ユーザーがあるライフイベントや問題意識を持つタイミングで広告を見せることが重要。例えば:
不動産:
結婚や出産、転勤などライフステージの変化で引っ越しを検討しているユーザーにリーチ
SNS広告で「結婚」「家族が増えた」「転勤」などの興味関心や行動をターゲティング
保険:
結婚、出産、転職、退職などのタイミングで保険の見直しをするユーザーが多い
広告クリエイティブで「お子様が生まれたら見直す生命保険プラン」など具体的事例を提示
教育:
学年や受験シーズン、転校・進級など
「春の新学期に向けて体験レッスン無料キャンペーン」など時期に合わせた訴求
3-2. LPとフォーム設計でCVRアップ
B2Cリード獲得の場合、フォーム入力がゴールになるケースが多い。したがって、LP(ランディングページ)のコンバージョン率(CVR)が鍵を握ります。
ファーストビューでユーザーの悩みと解決策を明示:たとえば「費用を抑えてマイホーム購入? 無料相談で最適プランが見つかる」など
証拠や安心感:お客様の声、導入事例、口コミ、専門家のコメントなど
シンプルなフォーム:問い合わせや資料請求を躊躇しないよう、必須項目を最小限に。電話番号を必須にするかどうかなどもABテストを行う
UX/UIの最適化:スマホ表示で入力しやすいフォーム、オートコンプリートなど利便性を高める
3-3. メールやチャットでの即時フォロー
フォーム完了後のフォローアップも、CVRアップに繋がるポイント。
自動返信メールで親切なトーン&次のステップ(担当から電話、資料到着までの日数)を明示
チャットサポート:問い合わせ前の不明点を解消するチャットbotやライブチャットをLPに設置し、離脱を減らす
B2Cリードは感情的な不安要素が大きいため、ユーザーの不安を可能な限り取り除くオムニチャネルなアプローチが有効です。
第4章:コンバージョン単価(CPL)管理と育成施策
4-1. CPL(Cost Per Lead)をどう見るか
ECのように即時購入のKPIがない場合、CPL(1リード獲得あたりの広告コスト)が中心的な指標となります。
CPL算出: CPL=広告費獲得リード数\text{CPL} = \frac{\text{広告費}}{\text{獲得リード数}}CPL=獲得リード数広告費
何をもって“適正CPL”とするか:
最終成約率やLTVを考慮して、許容できるCPL範囲を設定する
4-2. リード育成(ナーチャリング)の実践
不動産や保険、教育などは、問い合わせから契約・成約まで多少の期間があるため、問い合わせ後の継続接触(ナーチャリング)が効果的。
メールマーケティング:
一定期間ごとに物件情報や保険プランの詳細、受験対策ノウハウなど、価値あるコンテンツを送る
MAツール:
ユーザーがサイトを再訪問したり、特定の資料をDLしたりしたらスコアを加算→スコアが高いユーザーに特別オファーを送る
ウェビナーやセミナー:
予約ページから再度興味を引き出し、本格的な比較検討の場を提供
リードを取るだけで終わらず、「その後どのように育てて契約に至るか」を設計し、CPLだけでなくCAC(Customer Acquisition Cost)や最終ROIを意識するのが賢明です。
第5章:B2Cリード獲得モデル別アプローチ
5-1. 不動産(賃貸/売買)
主要訴求:
無料相談や内見予約、物件検索システムの使いやすさ
価格や立地、治安、学区など生活メリットを強調
広告チャネル:
リスティング(「賃貸 新築 1LDK」「戸建て 中古 安い」など)
Facebook/Instagramでのエリアや興味関心ターゲティング
リターゲティング広告で一度物件詳細を見たユーザーを追跡
LPで大切な要素:
物件画像や間取り図の見やすさ
地図表示、周辺施設の情報
相談フォームの簡便さ
5-2. 保険(生命保険・損害保険など)
主要訴求:
無料見積りや無料保険相談
ライフステージ別プラン提案(結婚、出産、マイホーム購入など)
広告チャネル:
リスティング(「生命保険 見直し」「車保険 一括見積り」など)
保険比較サイトへの掲載
Facebook/Instagram広告でライフイベントターゲティング
LPで大切な要素:
安心感・信頼度(大手保険会社の提携、口コミや実績数)
保険料試算ツールを提供し、すぐに概算を出せる仕組み
個人情報の取り扱いやプライバシーポリシーの明示
5-3. 教育(塾、オンライン講座など)
主要訴求:
無料体験や資料請求、成績アップ事例
資格取得実績や合格者の声など、成果をアピール
広告チャネル:
TwitterやInstagramで学生世代を狙う
TikTokで学習ノウハウ系動画配信、そこから無料体験へ誘導
リターゲティングで保護者層に再アプローチ(学費や学習成果を訴求)
LPで大切な要素:
過去の実績(合格率、点数アップ事例)
教師のプロフィールや指導方針の信頼感
申し込みフォームの簡素さと問い合わせチャットの設置
第6章:コンバージョン単価(CPA/CPL)管理と実務プロセス
6-1. 計測環境とLP計測設定
第3回で述べたように、GoogleアナリティクスやGTMで、問い合わせフォーム送信ページや資料請求完了ページをコンバージョン(CV)として設定する。
例:
CV = LPからフォーム送信 → サンクスページ到達
イベントベースで計測する場合もある(モーダルで完結するなど)
CPL = 広告費 / コンバージョン数
6-2. 広告運用サイクル
チャネル選定・予算配分:リスティング、SNS、ディスプレイなどを組み合わせる
クリエイティブ制作・ABテスト:画・コピーで複数パターン
LP最適化:ファーストビュー、フォーム、ユーザー導線を改善
CPLモニタリング:週次 or 日次で各チャネルのCPLやCVRを監視
予算再配分:CPLが高いチャネルは広告費を抑え、優良チャネルに増額。LPやクリエイティブを修正して再テスト
リード育成:メルマガやコールセンターなどで商談・契約へ
6-3. フォーム最適化のコツ
B2Cリード獲得におけるフォーム最適化は、CVRを大幅に変える重要施策です。
ステップフォーム:
1ページに項目を詰め込むより、2~3ステップに分けると離脱が減るケースも。ABテスト必須。
シンプルで分かりやすいデザイン:
必須項目と任意項目を明確に区分。ラベルや説明文を適切に配置
エラーメッセージの可視化:
入力エラーが分かりやすく、ユーザーが迷わないように
進捗バー:
ステップ2/3と表示するなど、ユーザーがゴールまでの距離を認識できる
第7章:顧客育成(ナーチャリング)とリードの質向上
B2Cであっても、高額商材や検討期間の長いサービスでは、ナーチャリングが必要になる場合があります。不動産や保険、留学サービスなどは顕著です。
メールシナリオ:
問い合わせ後に自動メール → 1週間後に成功事例やQ&A → 2週間後にキャンペーン案内、など。
電話・チャット対応:
MAツールやCRMで管理し、問い合わせを行ったが購入に至らなかったユーザーにフォローコール
オンライン相談やセミナー:
リード段階のユーザーに無料オンライン相談会やミニセミナーを案内し、信頼感を高める
リードの質とは「最終的な成約率」や「顧客単価」に繋がる可能性の高さを指します。CPLが安くても質が低ければ受注に結びつかないため、CPLだけでなくCVR(契約率)まで追うことが必須です。
第8章:よくある問題と対処法
8-1. 「お問い合わせは来るが、質が低く契約に繋がらない」
原因:
広告のターゲティングが広すぎ、気軽にフォームを送るユーザーが多い
価格帯やサービス内容が明確でないため“冷やかし”が混ざる
対策:
LPで「対象顧客の条件(年収や家族構成など)」「価格帯」をある程度明示し、ノイズユーザーを除外
訪問ユーザーの意欲を高めるための工夫(成功事例、料金目安など)を入れ、本気度の高い層を集める
8-2. 「SNS広告でCVRが伸び悩む」
原因:
SNS広告は潜在層が多く、購買意欲が低い段階で接触している
クリエイティブや文言がターゲットに刺さっていない
対策:
ABテストでCTAやビジュアルを最適化
カスタムオーディエンス(自社リスト)や類似オーディエンスを活用し、より見込み度の高い層に出稿
ロングランではなく、短期間で予算調整しながら成果を検証
8-3. 「広告代理店任せでCPAが高いまま改善されない」
原因:
代理店が表層指標(CTR, CVR)しか見ておらず、LTVや成約率まで考慮していない
インハウス(社内担当)との連携が不十分
対策:
アカウント構造やキーワード、広告文の定期レビューを行い、経営指標と代理店指標を紐づける
インハウスでダッシュボードを構築し、週次の定例会でデータを共有し改善策をディスカッション
第9章:まとめと次回予告
9-1. まとめ
B2Cリード獲得型のビジネス(不動産、保険、教育など)では、ECのように即購入完結とはいかないが、B2Bほど長期稟議もなく、短〜中期の検討プロセスを経るという特徴があります。このため、広告メディアの選定やKPI(CPL)設定、フォームCVRの最適化に加え、短期〜中期フォロー(ナーチャリング)が必要です。以下のポイントを再確認しましょう。
メディア選定
リスティング広告は購買意欲の高い層への直球
SNS広告(Facebook/Instagram/TikTokなど)はターゲット拡大や興味関心の喚起
ディスプレイ/リターゲティングで検討継続中のユーザーを追いかける
ターゲティングとCVR
ライフイベントや属性を細かく設定し、興味の薄い層への無駄打ちを減らす
ランディングページやフォームを最適化し、CPLを下げる
MAツールやメールフォローで育成
問い合わせ後のフォローアップで商談化率や契約率をアップ
成約データを広告やターゲティングにフィードバックして品質を高める
長期的なブランド&安心感も大切
高額商品(不動産、保険)や家族の同意が必要な場合、単なるCPLだけではなく、認知と信頼形成も考慮すべき
9-2. 次回(第9回)の予告
次回は、「代理店の選び方:大手・中堅・専門性の高い代理店のメリットとデメリット」をテーマにお送りします。大手広告代理店と中堅・専門代理店では費用・サービス範囲・得意分野が異なり、企業規模や目的に応じて選択肢が変わります。費用対効果や専門性、対応スピードなどを総合的に判断して、自社に最適なパートナーを見極める方法を解説しますので、ぜひご期待ください。
おわりに
本記事では、B2Cリード獲得編として、デジタル広告メディアの選定やターゲティング、KPI設定や顧客育成のコツを紹介しました。ECやB2Bとも違う、“中間的な商材”(不動産、保険、教育など)に適したアプローチを理解することで、ユーザーの購買・契約プロセスに沿った最適な施策を組み立てられます。
特に、広告でリードを獲得したあと、そのリードをいかに“温め”て契約に繋げるかが、B2Cリード獲得型ビジネスのデジタルマーケ成功の鍵となります。ライフイベントに合わせた訴求やナーチャリングを活用すれば、潜在層を効率的に顕在化できるはずです。
次回の連載第9回では、代理店の選び方を深堀りしていきます。大手・中堅・専門代理店のメリットデメリットを比べながら、どのようにパートナーを選択し、成功へ導くか――これから代理店を探している方や、既存の代理店を見直したい方にとって必見の内容になるでしょう。どうぞお楽しみに。
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