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第6回:【B2B編】ビジネスモデル別・広告メディア選定とKPI設定&ターゲティング実践

  • 執筆者の写真: マーケティング事業 統括 I
    マーケティング事業 統括 I
  • 4月14日
  • 読了時間: 13分

はじめに

これまでの連載では、デジタルマーケティングの全体像からKPIの設定、計測環境の整備、KPIモニタリング・ダッシュボード構築、そして前回は投資対効果(ROI・ROAS)を最大化するメディアアロケーションの考え方を深掘りしてきました。いずれも汎用的に使えるノウハウではありますが、B2BB2Cではビジネスモデルが異なるため、施策の組み立て方やKPIの考え方にも大きな違いが生じます。


本記事(第6回)では、B2B(法人向け)ビジネスでのデジタルマーケティング施策に焦点を当て、広告メディア選定やKPI設定、ターゲティングの実践的なポイントを解説していきます。BtoBの場合は「リード獲得→見込み客育成(ナーチャリング)→商談・受注→継続契約」という長めのプロセスになるケースが多く、LinkedIn広告やホワイトペーパー・ウェビナー、MAツール連携など、消費財のB2Cとは大きく異なる施策や視点が必要です。ぜひ、貴社のB2Bマーケティング強化にお役立てください。


第1章:B2Bデジタルマーケティングの特徴と前提

1-1. B2Bの購買プロセスとリード獲得

B2Cとの大きな違いは、購入決定までに複数のステークホルダーが関わることと、1件あたりの商談・契約金額が大きく、購買リードタイムが長い点です。消費財のように個人の即決で完結するものではなく、購買担当者・実務担当・経営陣など、複数の意思決定者がいる場合が多々あります。

  • 購買プロセス(B2Bの典型例)

    1. 情報収集(課題感の顕在化)

    2. リード獲得(展示会、Webセミナー、ホワイトペーパーDLなど)

    3. ナーチャリング(MAツールやメール、電話フォローで見込み度を高める)

    4. 商談化(具体的提案→比較検討→最終決裁)

    5. 受注→顧客化→アップセル/クロスセル

このプロセスを踏まえると、B2Bデジタル広告の主な役割は「見込み客(リード)を獲得し、ナーチャリングにつなげる」ことにフォーカスされるケースが多いでしょう。すぐに受注につながらなくても、リード情報を獲得し、長期的に教育(ナーチャリング)するという視点が欠かせません。

1-2. マーケティングとインサイドセールス、フィールドセールスの連携

B2Bでは、「Webや広告でリード獲得→インサイドセールス部隊が電話やメールでアプローチ→商談化→フィールドセールス(対面営業)が最終クロージング」という流れが一般的に見られます。デジタルマーケティング担当が広告やコンテンツで集めたリードを、いかに効率的にスコアリングし、優先度の高い見込み客をセールスチームへ引き渡すか――この連携体制が成果を左右する大きな要因となります。

  • MA(マーケティングオートメーション)ツールの活用で、

    • 資料DL、ウェビナー参加、サイト閲覧履歴などを基に見込み度を判定

    • スコアが一定以上のリードをインサイドセールスに自動で通知

  • CRMツールやSFAツールと連携し、

    • 商談ステータスや成約時の金額、失注理由などをフィードバックし、広告運用やコンテンツ戦略に生かす

このようにマーケ部門とセールス部門の情報共有がスムーズであればあるほど、B2Bデジタル広告の効果は高まります。


第2章:B2Bで活用できる主要広告メディアと特徴

2-1. リスティング広告(検索広告)

B2Cと同様、B2Bでも検索広告(Google AdsやYahoo!)は引き続き重要です。ユーザーが能動的に検索しているため、CVRが高い傾向があります。

    • 「○○システム 導入」「在庫管理 クラウド 比較」といった商材名+導入ワードで調べる担当者が多い

  • 注意点

    • 競合が多い業界の場合、クリック単価(CPC)が高騰しやすく、CPAが上がる可能性が高い

    • B2Bの場合、検索ボリュームが少ないニッチなキーワードでも、CVRが高いことがある。ロングテールキーワードをしっかり押さえるのが大事

2-2. ディスプレイ広告・リターゲティング

  • 特長

    • B2Bであっても、サイト訪問者に対するリターゲティング広告はかなり有効。商材の検討期間が長い場合、訪問後もしばらく検討していたり社内稟議に回っていたりするケースが多い

    • バナー広告による認知拡大やホワイトペーパーの誘導も有効

  • 注意点

    • 単にリターゲティングするだけでなく、セグメント(ページ閲覧内容、直近の滞在時間など)を細かく分け、ホワイトペーパーDLキャンペーンやウェビナー招待など、接触ステージに合わせた広告文を出し分けると効果が上がる

2-3. LinkedIn広告(B2Bに強い)

LinkedInは海外利用が盛んなSNSですが、日本国内でもB2B企業向けの採用や営業手法として活用が進んでいます。

  • 強み

    • 企業規模、役職、業界など細かなターゲティングができ、B2Bリード獲得に適している

    • 海外法人やグローバルで展開する際にも有効

  • 弱み

    • 日本国内でのユーザー数がFacebookなどに比べて少ない(ただしビジネスパーソンが中心)

    • CPCが比較的高い傾向がある

  • 活用事例

    • ホワイトペーパーのダウンロード誘導、ウェビナー告知、業界別のソリューション紹介など

    • 役職(CTO、IT部長など)や会社規模、業界を指定して配信することで高精度なアプローチが可能

2-4. Facebook / InstagramなどSNS広告のB2B活用

Facebook広告も、細かいターゲティングでB2Bユーザーを狙うことが可能です。興味関心や所属企業ページへのアプローチなど、LinkedInほどビジネス寄りではないものの、業種や職種に関連するグループやイベント参加歴などを活用すれば効果的なターゲティングができる場合もあります。

  • 注意点

    • B2C商材が多いプラットフォームなので、ビジネスユーザーはプライベートアカウントを使っている場合が多い

    • クリエイティブを「業界特有の課題」に訴求し、興味を引くなど工夫が必要

2-5. ホワイトペーパー、ウェビナー告知

厳密には広告メディアとはやや異なりますが、ホワイトペーパーやウェビナーへの誘導広告はB2Bリード獲得において極めて重要な要素です。

  • ホワイトペーパー広告

    • 「業界動向調査レポート」「課題解決ガイド」などをダウンロードさせることで、有用な見込み客情報(会社名や役職、メールアドレスなど)を得られる

    • リード情報を得たらMAツールなどでナーチャリングを実行

  • ウェビナー広告

    • ウェビナーのテーマを明確に(例:『物流DX最前線~在庫管理クラウドを導入するメリット~』)

    • 登録フォームに会社情報を入れさせ、見込み度の高い層を抽出

広告費を投下する際も、どのクリエイティブやLPでホワイトペーパーorウェビナー誘導するか、ABテストで最適化していく必要があります。


第3章:KPI設定とリード獲得におけるターゲティングの実践

3-1. B2B特有のKPI事例

B2BのKPIでは「問い合わせ件数」や「商談化数」を主要KPIとすることが多いですが、商談までが長期化しやすいため、中間指標(副次KPI)の設計が重要になります。

  • 主要KPIの例

    • 月間リード獲得数

    • 商談化率(リード→商談に至る率)

    • 受注金額や受注率(マーケ部門の範囲を超えるが経営層が重視する場合が多い)

  • 副次KPIの例

    • ホワイトペーパーDL数、ウェビナー申込み数

    • LPのCVR(問い合わせフォーム送信率)

    • MAツールでのスコアリング高得点リード数

    • メールマーケティングの開封率やクリック率

これらを最初に設計し、各広告キャンペーンの成果を評価する軸とすると「LinkedIn広告はCPAが高いが商談化率が高い」「ディスプレイ広告は大量のリード獲得はできるが質が低く商談化率が低い」などの分析がしやすくなります。

3-2. ターゲティングオプションの活用

1. LinkedIn広告のターゲティング

  • 企業規模(従業員数)

  • 業界、職種、役職、勤務年数

  • スキルやグループ参加など興味関心

2. Facebook広告のB2Bターゲティング

  • ユーザーがFacebook上で公表している勤務先や役職情報(精度にばらつきあり)

  • 業種ベースの興味関心(例:SaaS、クラウドコンピューティングなど)

  • 類似オーディエンス(自社のリードや顧客データを元に類似ユーザーを探す)

3. Google Adsリスティング

  • B2B系キーワード(「企業向け ○○ソフト」「法人の会計ソリューション」など)

  • 競合製品の名称をキーワードに使うことで切り替え需要を狙う

いずれも精度を高めるには、過去の成約データMAツールのリード情報を活用し、類似ユーザーを抽出すると成果が出やすいです。

3-3. フォームCVR向上とMAツール連携

フォーム最適化

  • 項目を最小限に絞る:会社名、氏名、メールアドレス、役職などは必要最低限に

  • ステップフォーム化:複数ステップに分けてユーザーに心理的負荷を減らす(ただしCVRとのバランスを要検証)

  • SSL化とプライバシー表記:企業向けでも安心感は重要

MAツールとの連携

  • リードスコアリング:ホワイトペーパーDL、サイト再訪問、メールクリックなどに応じてポイントを付与し、購買意欲を可視化

  • ステップメール:特定のスコア以上になったら、ケーススタディや成功事例メールを自動送信

  • インサイドセールスへの通知:しきい値を超えたリード情報を営業担当へ自動連携し、迅速にフォローアップ


第4章:具体的施策シナリオの例

ここでは、B2B企業が「クラウド在庫管理システム」を販売していると仮定し、広告メディア選定と実践シナリオを簡単に示します。

  1. リスティング広告(導入意欲の高いユーザーを狙う)

    • キーワード:「在庫管理 システム 法人」「在庫管理 クラウド 比較」など

    • ユーザーが具体的に導入を検討している可能性が高く、CVRや商談化率が期待できる

    • LPにホワイトペーパーのDLフォームを設置

  2. LinkedIn広告(ターゲット企業規模や役職を絞り込む)

    • 「従業員100名以上、製造業のIT部長・システム管理職」などセグメントを設定

    • ホワイトペーパーへのDLを促す広告クリエイティブを作成

    • DL後はMAツールでスコアリングし、一定スコアに達したら営業がアプローチ

  3. ウェビナー広告(SNS広告やディスプレイ広告で誘導)

    • 「最新 在庫管理DXセミナー」を企画、登壇者に業界の著名エキスパートを招く

    • LPで参加申込みフォームを設置し、企業名・役職・課題などをアンケート

    • ウェビナー後にフォローアップメール、追加ホワイトペーパー案内

  4. リターゲティング広告(ディスプレイ)

    • 一度サイトを訪問しホワイトペーパーDLに至らなかったユーザーに対し、別LPやウェビナー情報を再提示

    • リードが興味を失わないよう、定期的に接触ポイントを設計

  5. メールナーチャリング

    • ウェビナー後にさらに詳しい成功事例を送付し、意欲を高める

    • 「導入企業インタビュー記事」などで信頼度を上げる

    • 最終的にスコアが高いリードを営業に連携 → 商談

この一連の流れの中で、どの施策が最も商談化率や最終売上に貢献しているかをKPIモニタリングで追うわけです。


第5章:注意点や失敗事例

5-1. リード数ばかり追って質を軽視する

B2Bでは、リードの数だけ増やしても、商談や受注に繋がらなければ意味がないケースが多いです。数千件のリードを集めても、実質的に商談に至るのが数件しかないという残念な事態も起こりえます。

  • 対策

    • ホワイトペーパーのテーマや広告クリエイティブを、なるべく「具体的課題を持つユーザー」に絞る

    • スコアリングやMAツール導入でリードを育成し、「そこそこ興味あり」レベルの層を引き上げる

    • KPIとしては「商談化率」「商談あたりのCPA」「最終受注金額」まで視野に入れる

5-2. 代理店任せで社内にノウハウが残らない

代理店に運用を丸投げした結果、設定やレポートの細部がブラックボックス化し、いつまでも広告費が高止まりしている例は珍しくありません。

  • 対策

    • 定期的な打ち合わせで「どのキーワードが成果を生んでいるか」「どんなターゲティングをしているか」を共有

    • インハウス化のステップを計画し、担当者が代理店の運用手順を学べる体制を作る

5-3. オフライン連携を怠り、成約との紐づけができない

B2Bでは、実際の契約や受注がオフライン(営業訪問、展示会商談など)で完結することも多いです。そのため、「広告経由でリード獲得したが、その後どのように商談が進んで成約したのか」が追跡できないと施策評価が不明瞭になります。

  • 対策

    • CRMやSFAにて広告経由のリードIDを記録し、受注時に連動する

    • 営業担当が商談ステータスを更新すると、広告との紐づけができる仕組みを用意


第6章:ツール活用とスキルセット

6-1. MAツール(Marketo, HubSpot, Pardotなど)

B2Bリード獲得なら、MAツールの導入が非常に有効です。

  • 利点

    • ダウンロードやメール開封、再訪など行動ログを追跡し、スコアリングで見込み度を判定

    • スコアが一定以上になれば自動で営業担当へ通知

    • ステップメールやセグメント分けで、適切なコンテンツを自動送信

  • 注意点

    • 初期導入コストが高め

    • 運用担当者がシナリオ設計やセグメント管理を習得しないと宝の持ち腐れになる

6-2. CRM / SFAツールとの連携

SalesforceやMicrosoft Dynamics、Zoho CRMなどを使っている企業が多いです。獲得したリードをインサイドセールスがフォローアップし、商談化→フィールドセールス→受注までを一元管理できれば、どの広告やキャンペーンが最終的な売上に貢献したかを追跡可能になります。

6-3. 組織・スキルセット

  • マーケティング担当:広告運用やコンテンツ企画、MAのシナリオ設計

  • インサイドセールス:リードへの電話・メールアプローチ、簡易商談

  • フィールドセールス:最終プレゼンや契約締結

これらの連携がしっかりできるように、週次ミーティングSlackなどチャットツール連携で情報共有を密にする仕組み作りがポイントです。


第7章:B2Bデジタル広告の今後と展望

B2B市場でも、年々デジタルシフトが加速しています。展示会や対面営業に加え、オンライン完結で情報収集・比較検討する担当者が増えており、広告だけでなくコンテンツマーケティング、SNS活用などの重要性は今後ますます高まるでしょう。特にLinkedInのユーザーベースが広がり、国内でもビジネスSNSとして根付くようになると、さらにB2B広告の可能性が広がります。

また、MAツールやAIを活用した高度なスコアリングによって、リードの質を厳密に見分ける技術も進化中です。いずれは広告配信段階からAIが判断し、より成約率の高い層に自動的に予算が再配分されるような運用も一般化していくと考えられます。そのために、企業側が広告とセールス、CRMのデータを統合し、常に検証・改善を行う体制が求められるでしょう。


まとめと次回予告

まとめ

B2Bビジネスにおけるデジタル広告は、「単にCVを取る」というよりも、リードを獲得し、長期的な商談化・受注へ結びつけるプロセスが重視されます。そのために必要なのは、以下のポイントです。

  1. リード獲得を主軸にしたメディア選定

    • リスティング広告はCVRが高め、LinkedIn広告はターゲット精度が高い、ホワイトペーパーやウェビナー誘導にディスプレイ広告を活用、など。

  2. KPIは“リード数”だけでなく“商談化率”や“受注金額”も視野に

    • MAツールやCRM連携で最終成果につなげる道筋を設計。

  3. フォームCVR向上やクリエイティブABテストによる地道な最適化

    • LPの入力項目を最適化し、ホワイトペーパーやウェビナーへの誘導で質の高いリードを獲得。

  4. インサイドセールスとの連携

    • リードを取得後、素早くフォローアップし、検討度が高まったタイミングで商談を設定。

  5. 代理店や外部パートナーとの協働、もしくはインハウス化の検討

    • 自社にノウハウを蓄積しつつ、必要に応じて専門家の知見を活用。

こうした流れを「広告→リード獲得→ナーチャリング→商談化→受注」の一連の仕組みとして捉え、KPIをモニタリングしながらPDCAを回すのがB2Bデジタルマーケティングの成功の秘訣です。


次回(第7回)予告

次回は、【EC編】ビジネスモデル別・ROAS最大化のためのメディア選定&KPI設定をテーマに、B2CのECサイトに特化した広告戦略を掘り下げます。EC独自の売上指標(AOV、カート放棄率、リピート率など)やGoogleショッピング広告、リターゲティングの効果的な使い方、LTVを意識した運用方法など、B2Bとはまた違うポイントを詳しく取り上げる予定ですので、ぜひご期待ください。


おわりに

B2B向けデジタル広告におけるリード獲得とKPI設定、ターゲティング実践は、今後ますます重要性を増していくと考えられます。オフライン中心だった商談プロセスにデジタルを組み合わせることで、より多くの見込み客に効率的にアプローチし、商談化を加速できるからです。ただし、B2B特有の長いリードタイムや複数ステークホルダーの存在を踏まえたうえで、システム連携(MA、CRM)やインサイドセールス体制の構築が鍵となります。

今回ご紹介したメディア選定や施策の組み合わせ、KPI設定などを参考に、自社のビジネスモデルに合った戦略を立案してみてください。デジタル広告は継続的なPDCAが必要ですが、その分効果的にハマれば商談の質・量ともに飛躍的な向上が期待できます。どうぞ、B2Bデジタルマーケティングの可能性を最大限に活かして、大きな成果を手にしていただければと思います。


次回はECサイト向けのROAS最大化手法を詳しくご紹介します。B2C色の強いECビジネスではどんな指標設定が適切なのか、どんな広告メディア・キャンペーンが効果的なのかを実践的にお届けしていきます。どうぞお楽しみに。

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