デジタル活用で業務を加速する:Zapier中心の自動化とGoogle Workspace活用
- BPO事業 統括 M
- 1月23日
- 読了時間: 9分
はじめに
ビジネスの現場では近年、「人手不足」や「業務効率化」の必要性がかつてないほど高まっています。少数精鋭で成果を出さなければならない状況や、在宅ワーク・ハイブリッドワークの浸透により、場所や時間に捉われないデジタルオペレーションが求められるようになってきました。そこで注目されているのが、Zapierを活用した業務自動化、そしてGoogle Workspace(Gmail、スプレッドシート、カレンダーなど)を含むGAS(Google Apps Script)の徹底活用です。
本記事では、これらのツールを組み合わせ、“余計な事務作業”をノーコード/ローコードで自動化する方法を詳しく解説します。
問い合わせフォームに入力された内容を自動で社内共有し、Slackでリアルタイムに担当者に通知する
マーケティング指標や売上データを毎日自動集計し、レポートをSlackに投稿する
Google Apps Scriptを使って、既存のGoogle Workspaceをさらに拡張し、独自フローを構築する
デジタルツール活用によって得られる最大のメリットは、単に作業時間の削減にとどまりません。定型業務が自動化されれば、チームメンバーはより創造的な業務(アイデア出し、顧客とのコミュニケーション強化など)に集中でき、企業全体の付加価値が向上します。また、ミスや漏れが減るため、情報共有の精度が上がり、顧客満足度の向上やリードタイムの短縮にも繋がります。こうした効果は、競合が激しい今日のビジネス環境で大きなアドバンテージとなるでしょう。
デジタルオペレーションが求められる背景
現在のビジネス環境は変化のスピードが増しており、突発的なトラブルにも即座に対応しなければならない場面が頻繁に生まれています。しかも、人手が十分に確保できていない企業や、リモートワーク/ハイブリッドワークが進み、メンバー同士が顔を合わせづらい状況下では、業務フローにムダや遅れが生じやすいものです。
たとえば、問い合わせフォームから送られた連絡を担当者が手動でメール返信し、社内の別担当者へ情報を展開し、管理システムに手入力する――といったフローが残っているなら、そこで生じる時間と労力はばかになりません。人間が行う以上、記載ミスや連絡漏れのリスクもゼロにはなりません。こうした事務作業を自動化できれば、担当者はより重要なタスク(顧客との折衝や新企画の検討など)に注力できるのはいうまでもありません。
ZapierとGASが登場するのは、まさにこんな場面です。メールやSNS、スプレッドシート、チャットツールなど数多くのデジタルサービスをノーコード・ローコードで連携し、自在に“もし◯◯があったら××を行う”と設定してしまえば、自社独自のオペレーションフローを簡単に組み立てられるのです。
Zapierが変える自動化のハードル
Zapierの大きな特徴は、「ノーコード」で“連携フロー”を作れるところにあります。大きめの企業であれば、システム部門がAPI開発やRPAツールを導入して複雑な自動化を図ることも可能かもしれません。しかし、中小企業やスタートアップなどでは、そこまでの開発リソースを確保できない場合がほとんどです。そんなとき、Zapierは非常に有力な選択肢となります。
Zapierの内部では「Zap」と呼ばれるワークフローを構築するのですが、その基本は「トリガー(何かが発生したら)→アクション(何かを実行する)」というシンプルな概念です。たとえば、「ユーザーがGoogleフォームに入力したら、Gmailで自動返信し、同時にSlackチャンネルで通知する」という流れをわずか数十分の設定で実現できます。Webhooksを使えば、より高度な連携も可能です。
言い換えれば、Zapierは複数のSaaSを“橋渡し”して、手動作業をなくすためのハブとして機能してくれる存在なのです。
1.Zapier×Slack×スプレッドシートの基本事例
イメージしやすい例として、問い合わせフォーム→自動メール返信→Slack通知という流れを考えてみましょう。
トリガー:問い合わせフォームへの入力
GoogleフォームやTypeformなどがフォームを受け付けた瞬間、Zapierがそれを感知する
アクション1:自動メール返信
フォーム入力内容(ユーザーの名前や希望内容)をメールテンプレートに差し込み、即座に返信
アクション2:Slack通知
Slackの特定チャンネルに「新しい問い合わせがありました。内容は以下です。」と投稿し、担当メンバーを@メンション
これだけでも担当者が1日10通、20通の問い合わせを処理する手間が大きく減ります。さらに、Zapierとスプレッドシートを連携させておけば、問い合わせ内容を自動的にデータベースとして蓄積し、後から検索・分析が行いやすくなります。
2.マーケ指標のレポート自動化
もうひとつよくあるパターンは、マーケティングデータをスプレッドシートに集約し、毎朝Slackに投稿する仕組みです。たとえば、Googleアナリティクス(GA4)の訪問数やCVRなどをZapier経由でスプレッドシートに記録し、Zapierのスケジュール機能を使って午前9時にSlackへレポートを送るという流れを組めば、レポート作成に割く時間が不要になります。
設定方法は大まかに以下のとおりです。
Zapierのスケジュール機能で毎朝9時をトリガーに設定
“Googleスプレッドシートから情報取得”のステップを組み、最新行の数値を読み込む
Slackチャンネルへ投稿というアクションで、数値をまとめたメッセージを送る
社員は朝イチにSlackを見れば、前日のマーケ指標が即座に確認できるわけです。「あれ、昨日はCVRが普段より低い…何が起きた?」という発見を素早く共有できるので、チームの意思決定がスピーディーになります。
Google Apps Script (GAS)でさらに拡張する
Zapierは非常に便利ですが、外部SaaS同士の連携に強い一方で、社内の細かい処理やGoogle Workspace内の深い操作をするにはやや物足りない場合があります。ここで頼りになるのがGoogle Apps Script (GAS)です。GASはJavaScriptに似た文法で、Gmailやスプレッドシートなどをプログラミングで制御できる仕組みになっています。
GASの活用例
Gmailのフィルタ強化
特定の件名やラベルがついたメールをピックアップし、スプレッドシートに書き出す
スプレッドシートに追加された情報に応じてSlackに投稿するなど、Zapierとの連動も可能
スプレッドシート内の複雑な集計処理
単なるSUMやAVERAGEではなく、複雑な条件分岐や正規表現でデータを整形
一連の処理が完了したら結果をメール送付、PDFでエクスポートなどを自動実行
カレンダー連携
スプレッドシートに追加された日付をトリガーにGoogleカレンダーのイベントを作成し、自動的にリマインドメールを送る
Slack投稿(Incoming Webhook)
GASでSlackのWebhook URLにPOSTリクエストを送り、テキストや添付情報を通知
GASを使うには多少のプログラミング知識が必要ですが、サンプルコードや公式ドキュメントが充実しているため、ちょっとしたJavaScript経験があれば触り始められます。Zapierだけでは実現しづらい緻密なロジックや、Google Workspaceに密着した処理を書ける点が魅力です。
運用スタートまでの具体的手順
ここまで事例や特徴を紹介しましたが、実際にどのようなステップで導入すればいいのでしょうか。ざっくりとしたフローは以下のとおりです。
対象業務を洗い出す
まずは「問い合わせ対応」「レポート作成」「チームへの連絡」など、繰り返し手動で行われている業務をリストアップ
優先度の判断は「1回あたりの工数」「ミスのリスク」「頻度」が参考になる
小さな案件から始める
いきなり社内の全業務を自動化しようとすると混乱しやすい
たとえば「フォーム入力→自動メール→Slack通知」といったシンプルなフローを構築して成功体験を積む
Zapierでのワークフロー作成
ノーコードでZap(トリガー+アクション)を設定
GUIで連携サービスを選び、APIキーを登録し、動作テストを行う
エラーが出たらZapierのデバッグツールを使い、ログを確認しながら修正
GASを併用して機能拡張
Googleスプレッドシート内で複雑な集計やカスタムロジックが必要なら、GASのエディタを開きスクリプトを書く
トリガー設定(Time-drivenやOn Editなど)を行い、自動実行を可能にする
Zapierと組み合わせる場合、GASで作ったWebhookをZapierが呼び出す形も考えられる
チーム内で試験運用→本格導入
関係者に手順書やスラックチャンネルを周知し、1〜2週間はテスト運用
問題がなければ正式に稼働を開始し、他の業務にも拡大
定期的なメンテナンス・運用体制の確立
新しいZapを追加したり、既存フローを更新する際のフロー管理
Google WorkspaceやZapierのプラン変更に伴う設定見直し
ログやレポートのチェックでエラー発生に早期対処
得られる成果と今後の展望
本格的にデジタルオペレーションを導入すると、組織内にいくつかの大きな変化が訪れます。まずは、「余計な作業が減ってチームのストレスが緩和する」という点です。問い合わせのたびにメールアドレスをコピペし、スプレッドシートに転記し、Slackで一報入れる――というような面倒なフローが自動化されれば、心理的な負担が大幅に軽減されます。
次に、業務データが常にリアルタイムで共有されるため、「今どのタスクが進んでいて、どれくらいの成果が出ているのか」がチーム全員に可視化されます。これはPDCAを高速に回すうえで非常に大きな効果をもたらします。不要なミーティング回数が減り、「数字を追う作業」に時間を取られることなく意思決定が可能になります。
加えて、今後のAIやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の進化により、ZapierやGASとの連携もさらに加速するでしょう。すでに一部では、AIがチャットやメール返信の文章を生成し、Zapierがそれを送信し、GASが整理する――といった高度なオペレーションが実装され始めています。これにより、従来の人力が必要だったコミュニケーションまで大きく削減される可能性もあります。
まとめ:一歩ずつ始める“デジタル業務加速”のヒント
企業におけるDX推進を「大掛かりなシステム刷新」と捉えている方もいるかもしれませんが、今回紹介したZapierやGoogle Workspace/GASの導入は、比較的低コストかつ短期間で成果が得られるアプローチです。大きな投資を行う前に、小規模なフローを試すだけでも、担当者の手間やミスがぐっと減る感覚を味わえるでしょう。
一足飛びに完璧を目指す必要はありません。些細な作業でも「これ、Zapierで自動化できるんじゃない?」という発想を持ち、試作してみるだけで、組織は少しずつ変わっていきます。その積み重ねがやがては企業文化を変え、効率とスピードを兼ね備えたチームを育んでいくのです。人手不足が叫ばれる中、労働力を最大化するにはこうした“デジタルツール活用”が今後ますます重要になると私は考えています。
もし「やってみたいけれど設定が難しそう」「どこから手を付けていいか分からない」と感じたら、まずは問い合わせフォーム→Slack通知のパターンから始めるのがおすすめです。それだけでも、日々のメールチェックやコピペ作業から解放され、余裕が生まれます。その勢いでレポート自動化やデータ集計、さらには営業支援と領域を広げていくと、事務的なイライラや情報漏れといったトラブルが大幅に減少するはずです。
デジタルで業務を加速する取り組みは、一度始めると「次はこれも自動化できるのでは?」とキリがなくなるものですが、それ自体が成長と創造性を促す良いサイクルでもあります。ZapierやGASに加えて、今後さらに進化するAIや自動化ツールの情報もキャッチアップしながら、ぜひ社内のDXを加速してみてください。社員がイキイキと働き、本来のコア業務に注力できる環境が整えば、結果的に企業競争力の大きな向上に繋がることでしょう。
「まずは小さく始め、繰り返し改善する」――これこそが、デジタル時代のオペレーション構築における最良のアプローチだと私は確信しています。